嘘も方便

『じゃ、早速だけど。今どこに居んの?』

ああ、やっぱりな。勝手にしろ、って言う俺のセリフを完全に、OKと解釈してやがる

「どこって、自分の部屋だよ。ベッドの上に座ってる」
『部屋の様子は?俺が最後に行った時から変わってない?』

ああもうやだ、なんでそんなヤる気全開なわけ?電話越しでも分かるアキラの興奮した声が、こと細かに俺の部屋の事を聞いてくるのを一つ一つ適当に答えてやる

『ベッドは部屋の南側、扉から一番遠いところだな。向かいの公園に面した大きな窓が傍にあって、カーテンは開いている。部屋の電気は点いたまま。ベッドの下も、俺が前に行った時のまま?』
「ああ、あれから何にも触ってない」

触っていないと言うよりかは、触れなかったというのが正しいか
とにかく俺の部屋の物の配置は、アキラが思い描く俺の部屋と全く同じ、だと思う
耳をくすぐるような、吐息だけの笑い声がケータイのスピーカーから響く

『OK。大丈夫、イメージ出来た。つまり電気がついたままの状態だと、ベッドは傍の窓から全部見える訳だ』
「二階だけどな」
『そんなの分かんないよ。公園から望遠鏡で諒平の部屋覗かれてるかもしれないし』
「一般的な健全男子高校生の部屋覗くとか、悪趣味過ぎだろ」

しかもこの夜更け。短針は12時と1時の間を指している。春とはいえ外で突っ立って居るには寒いし、そんな不審者が目撃されたなんて情報聞いたことがない

『扉から遠い位置にベッドを持って来たのは正解だな。喘ぎ声が下の階のご両親に聞かれない』
「そう言う風に配置したのはお前だろ……おい、まさかこれを見越して模様替え手伝うなんて言ったのか?」
『まさか!人聞きの悪い事言うなよ』

そう、アキラが俺の部屋に来たのは引っ越しの前日。アキラが引っ越す際に要らなくなったものでまだ使えそうな家具を譲ってもらって、ついでに模様替えも手伝ってもらったのだ
ずっと折りたたみ式の簡易ベッドで寝ていた俺に与えられたこの造りのしっかりしたベッドも、元はと言えばアキラのもの
背の高いアキラが寝ていたベッドは俺には少し大きくて、流石に布団やシーツは全て新調したけれど、それでもどこかアキラの匂いが残っている気がして
実のところを言うと、このベッドに寝るようになって日が浅いとはいえ、まだ一度も熟睡できた試しがない

擬似的にとは言え今からこの上で犯されるんだな、なんて思うと、益々これから寝れるかどうか不安だ。その癖これから起きる事を想像して期待して震える身体が浅ましい

そっけない態度をとってしまうのは、素直になるのが恥ずかしいからだ。これはもう、生まれ持った俺の性格と言うほかに説明のしようがなくて、今更どうしようもない事で、本当は今すぐにでも熱に溺れたくて堪らない
その証拠に、俺の身体はもうアキラの声を拾う度に疼いてしまって、まだ卑猥な単語を囁かれてもいないのに、前が少し勃ってきてる気がする

ったく、ヤる気全開なのはどっちだっつの

淫らな想像で熱に浮かされて乱れそうになる息を必死に殺して電話してるけど、感のいいアキラの事だ。多分俺の身体が今どうなってるかなんて、目の前で見ているみたいに分かってるんだろう

『諒平、今かわいい顔してるんじゃない?』

アキラはいつだって余裕だ

「なんだよ、かわいい顔って」
『触って欲しくて、舐めて欲しくて、体中にキスして欲しくて、後ろから犯して欲しいって言う声、してる』

ほらやっぱり。この幼馴染で恋人な一つ年上の男には、隠し事なんてできやしない

『今すぐにでも裸に剥いて、そうしてやりたいんだけど、生憎電話越しだからさ。直接触ってやれないんだよね』
「は……そりゃ、残念だ」
『うん、本当に残念なんだよね。だからさ』

声を潜めて、アキラが囁きだけで喋る。耳に届くそれはアキラの声じゃなくて電子音でしか無いのに、それにさえも反応してしまう俺が居る

『いっぱい可愛い声、聞かせてね?』

セリフと共に、ちゅ、とリップノイズが響く。続いて熱い吐息が鼓膜を震わせてくるから、ああ、俺、耳舐められてるんだ、と想像してしまう
途端に襲ってくる羞恥心。早くなる心臓に、快感に絆される身体。電気の点いたままの明るい部屋で、部屋着から覗く手首と足首が赤く染まって行くのを見たくなくてぎゅっと目を瞑ると、耳から届く卑猥な音に更に意識が行ってしまって、喉が勝手に喘ぎ声を出す

「ひゃぁ……!」
『はは、かわいい』

思わず出てしまった声をアキラがからかって、それから更に耳を愛撫する音が激しくなる。止まない辱めに口を噛みしめてなるべく喘がないように。なるだけ流されないようにと強く奥歯を噛みしめたら

『諒平、声殺さないで。見えないんだから、音でしか諒平がどうなってるのか分からない』

なんて、色っぽく掠れた声と再びのリップノイズを耳に吹き込まれる
耳から電話を離してしまえば、この攻めは聞こえなくなる。分かっているのに俺の左手はますます電話を強く握りしめてしまって

「あぁんっ……」

アキラの熱い吐息と、時折聞こえるリップノイズと、舌舐めずりをするような水の音
それだけでもう、身体のあちこちがじんじんと反応を返すのが分かる
このままでは、服を着たままの状態で、直接触ってもいないのに達してしまうんじゃないか。それぐらいに前が張り詰めているのがわかるし、透明の汁が竿を伝っているのも感じる。下着が湿って気持ち悪くて、身体をぎゅっと抱きしめるように縮こまってしまう
けれどそれは、電話越しのアキラには見えやしない状態で

『ねぇ諒平、感じてる?今どんな感じか全部教えて?』

だからって、この状況を説明しろなんて強要して来るアキラは本当に性格が悪いと思う

「ゃ、むり……!」
『無理じゃないだろ。俺には見えないんだから。どうなってんのか分かんなきゃかわいがってあげられないよ。いいから教えて』
「やぁん……」

そんな事出来るわけがない、と首を横に振るけれど、アキラに俺の姿は見えていないんだから伝わるはずもなく。そんな事言ってないで、早く言って、と、相変わらず耳を舐めてキスしながら囁かれて、そんな事を何分繰り返しただろう

『ね、諒。止めて欲しいの?』

急に、アキラが冷たい声を放って、ぱたりと愛撫が止まった

「……え?」
『ちょっと前にも言ったけど、今日は四月二日。トゥルー・エイプリルだよ?エイプリル・フールの次の日は、真実しか言ってはいけない日、って言ったよね』

ああ、そう言えばさっきそんな事言ってたっけか。盛大に嘘ついて騙し合う日の次の日が真実しか言えない日なんて、そりゃぁアキラはすきそうなネタだな、としか思わなかったけど。それに乗せられてさっき大好きとか言わされたせいで今も身体が熱いんだけど
それが今一体どういう風に関係してるんだ?と、熱い頭で回らないなりに考えても、突拍子がなさすぎてついていけない。いや、アキラが突拍子もないのはいつもの事なんだけどな

アキラのため息が聞こえる。それはどこか呆れているようで

『あのね諒。今日は真実しか言ってはいけない日なんだから、諒の言う「嫌」とか「止めて」とかも全部俺は真実と受け取るからね?止めて欲しいんだよね。なら止めようか?』
「え……!?」

殆ど氷点下の様な冷たいアキラの声で冷たい言葉が突き刺さって、閉じていた目を思わず見開く
そんな、こんな状態で止められるなんて、あんまりだ

「ま、待って……!」

止められたくない。必死で声を出すけれど、帰って来るアキラの声はどこまでも冷たい

『待たないよ。止めて欲しいんでしょ?電話も切るからね』

なんて、言われてしまっては、どうしていいのか分からなくなって、半分涙声みたいになって叫んでしまう

「切るな!」

今電話を切られてしまったら、この熱をどうやって外に逃がせばいいのかわからない
まだこのベッドの上で自慰なんてしたことない。アキラの匂いが残るこんなベッドの上で自慰なんてしたくない
たかがテレフォンセックス。耳から相手の息遣いが聞こえる以外は自慰と大して変り無いのかもしれない。けれど俺は、このベッドの上でアキラに犯されたい。妄想なんかじゃない、本物の恋人に抱かれたい

「切らないでくれ……やじゃない。して欲しい。だから、切らないでくれ……」

欲望に塗れた声を、淫らな願望を吐き出すのは本当に恥ずかしい
どうしたって消え入るような小さな声になってしまう。けれど、今は電話だから。直接相手の耳元に声を吹き込む様なものだ。こんな小さな声でもきっとアキラには聞こえてる。その証拠に、大きく息をのむ音が俺の耳に聞こえてきた

落ち着き払っているようで、なんだかんだ言ってアキラは男だ

『何を、どういう風に、して欲しいの?』

なんて聴いてくる声が、色欲を隠し切れていない

「あ……アキラに……」
『俺に?』

この続きを言うのは、俺にはとてもハードルが高い
言わなきゃ先に進めない。分かっているのに言えやしなくて、恥ずかしくて全身が熱くなって、視界が滲んできたのは多分、涙が出てきたからだろう
そんな俺の様子を見えてもいないはずなのに、アキラは耳元にまた、口づけを一つ落として

『ゆっくり、言ってみな?』

まるで、後ろから大きな身体に抱きしめられているような、そんな錯覚
ここには無いはずのアキラの大きな手が、体中を撫でて安心させてくれているような
そう思ったら、小さな声で、するりと恥ずかしい事が言えた

「……ッ俺が、変になるところ、いっぱい触って、舐めて、かわいがって欲しい……!」

最後の方は叫ぶように一気に言ってしまって、あんまりにも恥ずかしくてまたぎゅっと目を閉じると、涙が溢れて流れ出た
言ってしまった、と言う羞恥と、これで先に進める、と言う安堵感で胸がいっぱいになって、また前が少し大きくなるのが何となくわかったけれど、恥ずかしい事を言わされるのはこれで終わりじゃなかった

『変になるところって、どこ?』

恥ずかしさのあまり息が上がってしまってはぁはぁと肩で息をしていると、アキラが、心底分からないというような声で訪ねてくる

「ッはぁ?わ、わかってる癖に……!」
『分かんないよ。そんな抽象的なこと言われてもさ。ね、どこなのさ?全部順番に言ってよ』
「ゃ、ぁん……!なんで……!」
『嫌なら別に言わなくて良いよ。その代わり電話切るけどね』

ついでにさっき言ってくれなかったやつ。そこが今どういう状態になってるのかも教えてよね、なんて凶悪なセリフが鼓膜を震わせる

『とりあえず、来てる服脱いじゃおうか。部屋着スウェットでしょ?全部脱いで』
「あぅ……」

命令するような強い口調のアキラには、逆らえやしない。今日がトゥルー・エイプリルであろうと無かろうとそれは変わらないことで、もし逆らったらこれ以上の辱めを強要されるのは目に見えてるから、一旦ケータイを脇に置いて素直に裸になる
肌を布が擦れる感触とか音にも敏感に反応してしまって、いちいち小さく喘いでしまうけど、この声までは多分アキラに聞かれていないだろう。そう思っていたのに

『はは、服が擦れただけで感じちゃうんだ?ほんと淫乱だよね、諒平』

なんて、再び耳にあてた瞬間ケータイからとんでもないセリフが聞こえてきて

「ひゃぁっ!?」

思わず小さく悲鳴を上げた

『びっくりした?実はスピーカーモードにしてるんだよね』

だから今部屋中に諒平の声が響いてんの。とか笑いながら言うか普通!?

『ああでも、こんなかわいい声盗み聞きされたくないから、もうスピーカーモード止めるね』

俺、幼馴染だけどこいつのこの思考回路だけは、一生理解出来ない気がしてる
声には出さずに心の中だけで呆れていると、再びアキラの命令が下される

『で、どこがどうなってるの?上から順番に言って行ってよ』

上から順番、って言う事は、どこからなんだろうか。とりあえず順番に、言って行くしかないだろうか

「顔、熱い……」
『うんうん、顔ね。熱くて熱くて溜まんなくて、どうしたって眉毛が下がっちゃって、涙が滲んだ目元が赤くなってすごく可愛くて、ついでにちょっと泣いたりとかしちゃって、口が閉じられなくて小さく開いちゃって、可愛く喘いでるんだよね?』

誰もそこまで言って無いけど、でも実際そうなんだろう。自分で自分の顔は見えないから確認のしようがないけど、さっきから頬が熱くて口が閉じられなくて喘いでばかりいるからそうなのかもしれない

『でもさ諒平。確かに諒平は口づけされるとすごく可愛くなるし、変にもなっちゃうよ?でもそうじゃなくて、もっとさ、既に変になっちゃってるとこ、他にあるでしょ?』

もっとこう、ジンジン疼いちゃってる感じのとこ、上半身にあるよね?と、声を潜めてアキラが問うてくるその声にさえ、言われた個所は張り詰めてしまうのを感じてしまう

「ァ……胸……」
『胸?』
「ッ!ちくび……?」
『もっとかわいい言い方、教えてあげたよね?』

アキラの舌なめずりをする音が電話から響く。ちゃんと言えたら舐めてあげるよ、なんて言われているみたいで、実際に舐められることなんてないのに俺の身体は期待してしまって、また熱くなってしまうから

「っ……ぉっぱぃ……」
『よくできました』

ぎゅっと目を閉じて、教えられた通りの言葉をつぶやくと、羞恥が快感に直結して、覆う布が無くなって直接空気に晒されるようになった前が又ダラダラと汁を零して、もうすっかり濡れそぼってしまっているのが触らなくても分かる

「ぁあんぅ……!」
『ふふ、諒平可愛い』

もう、触ってほしい。触りたい。触って上下に擦り上げて、先端を虐めて、白い物を噴き上げて楽になってしまいたい。アキラの大きな手が、俺の制止の声を聞かずに勝手に俺の身体を弄って泣かせてしまう妄想を止める事が出来ない
いや、これは想像じゃなくて、いつもアキラが俺にして来る愛撫を思い出しているだけなんだけど。この場にないその悪戯な手をどうしたって求めてしまう
なんでもいい。例えば今言った乳首でもいい。とにかく直接的な快感を得たくて、乳首に手を伸ばそうとすると

『で、その諒平の厭らしいおっぱいは、今どんな状態なのか全部教えてよ』

厭味なまでのタイミングの良さで、アキラが卑猥な言葉を紡ぐから、俺の開いている右手は乳首まで到達できずに、丁度女の子の乳房のある辺りを掴んでしまって、乳首までとはいかなくともそこも快感を得るポイントな俺は大きく喘いでしまう

「ふぁっ!?」
『どうしたの?まさか自分でおっぱい触ってる?』
「ち、ちが……!!」
『まぁいいや。触った方が自分でどうなってるのかよく分かるでしょ?自分でおっぱい触って、感触とか、どう触ったら気持ち良いのかとか全部教えてくれるよね?』

悪魔の様なことを平然と言ってのけて、反論を許さないとばかりに、アキラは俺が自分で乳首を触ることを強制してきた
けれどそれは感じきって頭がとろけ切った俺にとっては願ってもない事で、卑猥な囁きに一瞬怯んだ後、ゆっくりと右手を上にずらして、人差し指と中指の間でゆるゆると乳首を挟む

「ぁふ、あ!」

今日初めての、性感帯への直接的な刺激
待ちわびたその快感に、頭の隅がチリチリと焼き切れるような錯覚を覚えて、恐る恐る乳首を触っていた俺の指は段々大胆に、刺激的に動いて、俺自身を追い詰める

「ぁぁあぁぁっ!ひゃぁ、ぃ、やぁあんっ」

もうとっくに限界まで固くなっていたと思っていた乳首は、指が触れた事によって更に固く張り詰めて行って、触っていない筈の反対の乳首も疼いてしまう

『ね、諒平。随分一人で楽しんでるみたいだけど、おっぱいどんな感じなの?』
「ぁぅ、あっ、熱くて固くて、ジンジンする、!あぅんッッ」
『ふぅん。熱くて固くてジンジンするんだ。どんな風に触ってるの?』
「ッな、撫でたり、挟んだりぃ……!」

俺の嬌声を聞いてどう思ったのか、熱っぽい声を零すアキラが、少し考える風に、ふぅん、と言って

『じゃぁ、まだ思いっきり摘んだりはしてないんだ?』

笑うような、からかうような吐息と一緒に、確認する様な、それでいて確信の籠った口調でそんな事を聞いて来て

『いい、諒平。約束通り気持ちよくしてあげるから、気持ちよくなる為に俺の言うように手をちゃんと動かしてね?それで、俺が実際に触ってるの、想像して?』

できる?なんて聞いてくる声すら卑猥で、厭らしい欲に塗れたアキラの顔が浮かんでくるようで、首を縦に何度も振りながら、濡れた声で小さく、できる、と返事をすると、アキラは又電話越しにキスを一つ寄越してくれる
あ、今の絶対、鼻先にキスしてきた
とか。目を閉じて思い浮かぶ光景は、全裸で全身をぎゅぅっと縮めるように座った俺の頬に手を添えたアキラが、優しく目を閉じて顔を寄せてくるそんないつもの光景で

『じゃ、とりあえずベッドに仰向けに寝転がって、ケータイから手を離して……枕元の、諒平の声がよく聞こえるところにケータイを置いて』

目を見開いてもアキラは目の前には居ないけど、耳に届く声が近くて、リアルに向かい合って耳打ちをされたように錯覚して、また前が物欲しげに震えてしまうけど、手を伸ばすのを我慢して言われたとおりの姿勢になる

「ッん……した、よ……」
『うん。そしたらほら、両手がちゃんと使えるようになったでしょ?』

顔の横に置いたケータイに、心持ち顔を寄せるような体制で話しかけると、さっきよりかは遠いところからアキラの声が聞こえてきて、ああ、まるでアキラが上から俺のこと見降ろしてるみたい、とか思ったりして

『そしたらね、左手で左のおっぱい、最初は親指でゆっくり丸を描くみたいに、そーっと触って……』

アキラの声にしたがって、左の親指を左の乳首へ沿わせる。言われたとおりに優しく指先が触れた瞬間、小さく喘ぎ声が漏れて、腰が跳ねてしまったけれど、刺激としてはいまいち物足りなくて、もっと強い刺激がほしい

「ひゃぁぅ……っん、ぁ」
『いいね、かわいい声、ちゃんと聞こえてる』

次は人差し指で引っかいてみて?その次は親指と人差し指で先端をちょっとだけ引っ張ってみて?と、アキラの指示は段々エスカレートして行って、気付けば俺の声もそれに合わせてどんどん大きくなってしまっていた
アキラは指示を出しながら、時々リップノイズを響かせたり、舌を使って水音を響かせたりして、これじゃ、まるで、アキラに乳首を触られながら全身に跡をつけられてるみたいで

「ぁああぁんッッ!」

両手の親指と人差し指で両方の乳首を強く引っ張った時、あんまりにも気持ちがよくて、前から大量の汁が流れ出す。溢れた汁は竿を伝って、膝を立てていたせいで後ろまで濡らして、濡れた後ろが呼吸に合わせて卑猥にその口をはくはくとさせる
妄想の中のアキラが、段々大胆になって行く
今俺の乳首を辱めているのは紛れもない自分の指の筈なのに、アキラの言葉に従って、アキラの意のままに動くそれはまるで俺の指じゃなくて、アキラの指に犯されているみたいで

『はぁっ……ほんと諒平、厭らしい』

目の前にまるで、本物のアキラが居て、舐めるような目つきでを視姦されているような、そんな妄想
まだ乳首だけしか触ってないのに、もういつ白い物を噴き上げてしまってもおかしくないくらいに感じきってしまって、俺の口からはもう、卑猥な言葉と嬌声と吐息しか漏れてこなくて

「アキラぁ……!もぅ、ィっちゃ……!ゃぁっ、イッちゃ……!ぁぅ、ん」

乳首を触られただけで達したことは一度や二度の話じゃないし、我慢しろと言われたってこれ以上の刺激を与えられたらすぐにでもイってしまいそうで、熱さに犯されて回らない頭と回らない舌で何度も何度も、イく、イっちゃう、イかせて、と懇願するけれど、アキラは本気でどう言う事なのか分からないというように

『で、諒平は、何がどうなってどういう風になってるって?』

とか、とぼけるように聞いて来やがる

「だからぁ、イっちゃぅっ」
『はっ、イくって何?どこがどういう風になっちゃうの?教えてよ、諒』

分かっていたけど、アキラは徹底的に俺に淫猥な単語を言わせたいらしい。電話越しで姿が見えないこととトゥルー・エイプリルを盾に、俺が逆らえないのをいい事に
呂律の回らない俺がどんな風に乱れているのかを想像してか、アキラの声にも少しずつ荒い息が混ざり始めていて。余裕ぶってはいるけどたかが年差一つ。惚れた相手の痴態に弱いあたり、俺達はとてもよく似ている

『ん、諒平。教えて、今、諒平のかわいいおちんちんからミルクが零れそうで熱いの?』

このままでは何にも変わらないと思ったのか。焦れたアキラが俺が答えやすいように、言葉を寄越す

「あっ、ぅん…!」
『ミルクが出そうなのを我慢して、おちんちんがシロップ塗れになってるの?』

耳に届くのは、アキラの喉が鳴った音だ。こんな風にグズグズに濡れた俺のものを、アキラは口に含むのが大好きだから。そのまま、口の中で弾けてしまった物を余すことなく飲み干すのが好きだから。全て飲んだ後、残滓を吸いとるように吸い上げて、竿の先端から根元までねっとりと舐るのがお決まりだから
アキラの言葉をそのまま借りるなら、俺のそれは今まさに「食べごろ」で、意図せずアキラの口内の暖かさと舌の感触を思い出して腰が大きく揺れてしまう。なのに

「ぁぅ、んぁ、アキラぁ…!」
『ん、だめだよ諒。舐めてなんかあげない』

そりゃ電話だから物理的には無理だろう、けど、アキラの言葉に含まれた意味合いはそう言う事ではなさそうだ。耳元でアキラが笑う気配がする、ああ、なんかすげえ嫌な予感

『だって諒平…俺が言うまでおちんちんがどうなってるのか教えてくれなかったもの。これって、お仕置きが必要だと思うんだよね』

ほら、やっぱり。こう言う時の俺の予感ってのは、当たらなくてもいいのに当たる
そんな俺の気も知らないで、だからさぁ、とか妙に勿体ぶって、アキラは今までで一番淫猥な声で俺にトドメをさす

『おちんちんからミルクが零れないように握ったまま、諒平のえっちな後ろの口で感じて、イって?』

さながらにそれは悪魔の囁きのようで、快感で頭の隅がぼーっと霞んで居たのが嘘のように俺は身体が冷えて行く気がした
あろうことかアキラは、俺が一人で前立腺を刺激してのドライオーガズムを強要してきた

「は、えっ?」
『言っておくけど、出来ないとか、無理、なんて聞かないからね。お仕置きなんだから』

わ、わぁ。なんかもう、だめだこれ。目の前で目を細めてにっこり笑うアキラの幻覚が見える。こうなったらもう、言う事聞かないと絶対に許してくれないのが登アキラの怖いところだ。さっき服を脱ぐときアキラに逆らったらこれ以上ひどい辱めが云々って言ったけど、今のこれがまさにそれだ。これ以上ないと言うぐらいの辱め
やっちまったなぁ、なんて、相変わらず熱っぽいけどさっきまでに比べたらちょっと冷静になった俺が後悔したところで遅い。なんで素直に何がどうなってイきそうかって言うのを言わなかったんだ、数分前の俺。とか、一人でぐるぐるしてる俺のことなんてアキラはお構いなしで

『じゃ、俺の言うとおりにしてね』

なんて、今から鼻歌でも歌うのかよ、って感じの超ご機嫌な声で次々と指令を出してくる
言われたとおり俺は、うつ伏せになって、枕に顔を埋め、膝を胸に引き寄せて、足を少し開いて尻を高々と突き上げ、そして指を咥えて唾液で湿らせ、それをさっきから俺の意思とは関係なくひくついてる後ろにまずは一本、ゆっくりと沈めて

「……っ…ん……ふ」

幾ら数えるのもいい加減に馬鹿らしくなってきたほどのアキラとの性交によって、人よりもずっと柔らかくなってしまったとはいえ、元々そこは入り口なんかじゃない。傷つけないように慎重に指を進めるけれど、異物感を感じずにはおえない

「ぁ……んんっ」
『随分、きつそうだね?』

紅茶でも飲んでんのか、ってぐらいの優雅さで、アキラが訪ねてくる

『でも、感じてるみたいだ。指もう一本増やそうか』

逆らえやしないアキラの指示のままに、俺の右手は勝手に動いてもう一本指を穴に沈める。そのまま更にもう一本指が入って、三本の指を咥えた俺の後ろはいい加減キチキチになってしまう

「ぁふ……」
『うん、ちゃんと三本咥えたんだね……でもおかしいな。いつもならもうおちんちんからミルクが零れちゃうのに、今日はよく持ってるね?』

イっちゃうって思った時に左手でおちんちん握るんだよ、なんて言われたのを律儀に守って、俺の左手はまだ何にも掴んでいない
原因は俺が一番よく分かっている。俺の指では、いいところに届かないのだ
ちゃんと言われたとおり、アキラがいつもするのを思い出して指を中で動かしても曲げても、俺の一番いいところには俺の指では絶対に届かない

「ぁん……あぅ……」

何とか奥の方へと指を進ませても、後もう一歩のところで指先が触れないのがもどかしい。腰を振っても頭を振っても一緒だ。物理的に無理だ

『諒平、どうしたの?』
「ぁんっあ、届かな……!」

枕のすぐそばに置いたケータイのスピーカーではきっと、俺が今浅ましく腰を振りながら唾液に塗れてべとべとに濡れた指で必死に後ろを掻きまわして、くちゃくちゃ響いてる音なんて拾えてない。さっきアキラに攻められた胸を左手で摘んでみるけれど、それだけでイけそうになんてなかった

『届かない?…ああ、そう言うことか』

耳元で微かにアキラが笑う。相変わらず優雅な口調に危機感を覚えて一瞬身を竦ませてしまった。当たらなくてもいいのにこう言う嫌な感ってのはつくづく当たる

『ね、諒平。ベッドの下、俺が前行った時から触ってないって言ってたよね?』
「ぃ、ぅ…ン」

ああ言った。言ったよ、けどそれが一体今どういう関係が

『じゃ、前咥えさせてあげたバイブもベッドの下に有るはずだよね』

……関係有った。悪夢だ

実のところ。この部屋のベッドの上で抱かれたことはまだ一度もない。それはさっきも言った通りだ
けど、この部屋では既に模様替えしてから一度犯されてる。丁度部屋の真ん中のカーペットの上で、下の階でばっちり俺ら両方の両親が談笑してるのに、真昼間っから盛られた

その時使われたバイブとローションが、ベッドの下の収納スペースに有る
俺が部屋を模様替えしてから一度も熟睡できない最も大きな原因。何かの拍子にあの事を思い出す。あの日使われたバイブがベッドの下にあるってだけで顔が熱くなるのに、実際に見て触れなんてできやしなくて移動させられない

『……あるんだよね?』
「ある、」

そんなもんとっくに捨てた!なんて言えば良かったんじゃないか、俺。何素直に言ってんだよ。とか、言った傍から後悔したけどもう遅い

『じゃ、それ使って』
「は?」
『だって、諒平の指じゃ諒平がおかしくなっちゃうところに当たらないんでしょ?じゃぁもうバイブ使っておかしくなっちゃうしか無いじゃないか』

何が何でもアキラは俺にバイブを使わせるつもりらしい。穏やかな声でえげつない命令を下してくる
そして俺も、いい加減自分の指ではどうしたって気持ち良いところに届かなくて、焦れて理性が弱くなってた

「わかった……」
『ん。いい子だ』

今日何回目か分からない音だけのキス。それだけで幾ら卑猥なこと言われようが絆される俺もかなりアキラに甘い
ごそごそとベッドの下を漁って、グロテスクな色と見ためのバイブを取り出す。今更だけどすげえやらしい見た目してんな、これ

これが今から俺の中に入るんだよな……ああでも、アキラの方がいいな。なんて、今言っても仕方ない事を思ったところで口には出さないけど
今はこれがアキラの代わりだ。そう思うとなんだか愛おしく思えてくるから不思議だと思う

『下の口でくわえる前に、上の口でたっぷり舐めるんだよ……そうそう、上手いね』

わざとアキラによく聞こえるようにケータイの真横でバイブをしゃぶる。時々大袈裟に喘いでみたりもして、我ながらサービス精神が旺盛だと思ったりして
バイブがいい感じに唾液に塗れてきたところで、俺はアキラに許しを請う

「あぅ、アキラ、ほしぃ」
『は、煽らないでくれよ、厭らしい……良いよ。バイブ入れて。いい声いっぱい聞かせて……それでおちんちん握ったまま、可愛くイって』

俺が舐めているのでも想像して、自分で慰めていたんだろうか。余裕のない声でアキラがOKを出すと、俺はバイブをゆっくりと後ろに沈めて、いいところに当たったのを確認するとスイッチを入れた

途端に襲ってくる快感に、逆らえなんてできやしない

「ひゃ、ああぁっ!!あああああ!!!」
『は、どう?気持ち良い?』

今までで一番分かり易い、快感にまみれたアキラの声。それは俺の中に潜り込んで、擦り上げてくる時の声とよく似ていて
後ろに入っているのはアキラのものじゃないって分かってるのに、ぎゅっと締めつけてしまって、また一段と良い所にバイブの刺激が直撃するから、俺はもう喘ぐしかできない

「ゃ、ああっ、イっちゃう、イっちゃうぅ……!!あ、あ、出ちゃ、出ちゃぅ!」
『っく、ミルク、出しちゃだめだよ……!今日は飲んでやれないんだからっ!』

イきそうで堪らないのに、ぎゅっと竿の根元を掴んでいるからなかなかイけない

出しちゃう、出しちゃだめだよ、なんてやり取りを何回しただろう。もう俺の身体は言うことなんて聞かなくて、アキラの声だってもう全然余裕が無くて、本能に塗れた雄の獣って多分こういう感じだよな、なんてぼーっとした頭の隅で思うけど明瞭な思考にはならなくて

『あっ、く……!諒……!』

余裕のない声で俺を呼ぶアキラが愛おしい。そう思った瞬間だった

「!!!あ、あああああああっ!!!!」

こみ上げてくる強烈な快感に押しやられて、俺は意識を手放した



*



……最悪だ

『やー。ほんと可愛かった』
「うるさい、黙れ……ああもう……ほんとヤダ」

あの後

本当にアキラの命令通り、ドライでイったご褒美と称して、更にアキラに散々恥ずかしい事を強要され、理性がすり切れて吹っ飛んでしまっていた俺は従順にそれらに答えて

結果。腰が上がらない。人様に言えないあんな所やこんな所が余すところなく全てだるい
気分最悪の俺に対してアキラはと言うと、さっきからあの時のあれが可愛かっただの、あの時のあれが厭らしかっただの、最中のハイライトを永遠と語ってくるから、ケータイを投げ捨ててやりたい衝動にかられる

何がすごいって、結局部屋の明かり点けっぱなしだったことに気付いた俺の心の傷付き具合。向かいの公園に誰もいないことを切に願うぜ、まじで

「大体お前が、今日はトゥルーエイプリルだって言うから」
『ああ。あんなの嘘だよ』

……は?

「はああああああああああああ!!!!?????」
『トゥルー・エイプリルなんて嘘だよ。それにエイプリルフールで嘘吐いて良いのなんてその日の午前中だけだよ』

あんぐり口を開ける俺に対して、アキラは続けざまにとんでもない事を言ってのける

「な、なん…え、え……??」
『諒平。俺がエイプリルフールにしか嘘吐かないと思った?』

ああ、そうだよな。登アキラはこういう人種だ
いつも余裕で、いつも飄々としてて、やたら頭の回転が速くて、俺がどうあっても勝てない男だ

『あ、でもね』

そして

『俺が諒のこと大好きなのは、嘘じゃないからね』

こんな面倒臭い恋人が、俺は大好きでたまらないんだ

「……ばぁか」

ああ、甘いな。俺……




『やっぱり何回思い出しても可愛い。ほんと録音しといてよかった!』
「!?は、ちょ……ふざけんなよ!!消せ!!!!!!」






通話時間 ??:??












































fin