おおう

必死にボールを追いかけて、コートの中を走り回って夢中になっていく感触が好きだ、けれど

「○○さ、あいつ最近見なくね?」
「退部したらしいぞ。今はサッカー部だと」

バスケ以外の所でもそいつを得ることは出来るのかもしれないな

木村とこの話をするのは何度目だろう。バスケ部員の同期や先輩や後輩の誰が辞めて、今違う部活で活躍しているらしい、と言った事を。今話題に出た奴は同期の中で一番足が速かった選手だ。きっとサッカー部でも足の速さを生かして頭角を現すのはすぐだろう

「そう言えば今日だな、インターハイのレギュラーの発表」
「ああ。そうだな」

俺はバスケが好きだ。他のスポーツと比べて狭いコート、他のスポーツよりも反則既定の多い複雑なルール、十分×四クオーターの試合時間、瞬時に要求される判断力と高度な駆け引き。そういったものに刺激されて早くなる心拍数

いや、そんなごちゃごちゃした事よりも最初は、ただ上手くドリブルで相手を抜き去った時の高揚感とか、ボールを奪い取った時の充足感、シュートが決まった時の爽快感なんてものに取りつかれたんだったっけな

「では、インターハイのレギュラーを発表する。まずはスターティングメンバー……」

中谷監督がいつも通りの抑揚のない声で次々に背番号と名前を読み上げてゆく。その中に俺、宮地清志の名前は上がらなかった

あ?自己紹介……ったく
宮地清志。秀徳高校バスケットボール部二年。ポジション:スモールホワード……これで充分だろ

ベンチを含めたレギュラー全員の名前をあげて、インターハイまでの残りの日程の練習メニューを確認。その後レギュラー以外の部員は解散を言い渡され、残りの部活時間は個人練習となった
いつもパスの練習やワンオンワンの相手役だった木村は、ベンチメンバーの一番最後に名前を呼ばれたから、俺は今日は一人でできることを重点的に練習することにした。具体的にはシュートとドリブルの練習だ
二年でレギュラー入りしたのは、木村と大坪だけだった。残りのメンバーは三年の先輩以外では一年が何人か

悔しく無いわけないだろ

別に自分の実力を過信していたわけじゃぁないし、レギュラーに選ばれたメンバーが努力していたのも知っている。当たり前だ。努力なくしてレギュラー入りできるほど東の王者の椅子は安くない。分かりきっちゃいるが嫉妬してしまう。悔しい

「宮地……」
「よ、木村。レギュラー入りおめでとう」

けれど私怨を持ちこんで折角の親友のレギュラー入りを祝えないようじゃ、人間として終わってる。木村は聡いから、自分だけがレギュラー入りしたことを俺がどう思ってるかなんて多分見抜いちゃいるだろうが。そこはお前、素直に喜べよ、自分のことなんだから

「絶対勝ち進めよ。お前と大坪が居て負けるなんてヘマしたら纏めて顔面踏んでやる」

上手く笑えているかは自信が無いが、努めて明るく振舞って肩を叩いて激励すると木村は、物騒なこと言うなよ、と言いながらやっと少し頬を緩める。そうそう、お前の努力がやっと実ったんだ。そうやって笑ってろ

「あーあー、テスト期間じゃなきゃぁお前ら二人マジバでセット奢ってやるのにな」

進学校でもある秀徳は、月一で定期テストとは別に実力テストが行われる

「そりゃ残念だ」

並んで着替えを済ませ、更衣室を後にする。そのまま二人並んでいつも通り、軽口を叩きあいながら並んで下校する

「なぁ宮地。今年はどこが勝ち進むと思う?」
「さぁな……予測で物事語るのは好きじゃねえ……」
「そうか」

電車の明りの下で木村は熱心に今日手渡された予選リーグのトーナメント表を睨んでいる。予測で物事を語るのは好きじゃぁないが、予測するぐらいは勝手だろうから言葉には出さずに決勝リーグの顔ぶれを俺は思い浮かべる。自分達秀徳の名前がある予選ブロックと、東京都の残りの王者――北と西が居るのは別のブロックだから、この二つと当たるのは決勝リーグになるだろうから、木村が言っているのは残り一枠のことだろう
事実木村が睨んでいるのは王者のいずれも所属しないブロックの物みてえだ。そいつをみて何やら難しい顔をしていたが

「この高校知ってるか?」
「ん?」

一人で考えても埒があかないと思ったのか、トーナメント表を俺に見せ、木村が示した高校の名前、なんて読むんだ……『誠凛』?

「いや。知らねえ……どうかしたのか?」
「そうか。いや、せいりん、と読むらしいんだが、中谷監督がやたら気にしていてな」
「監督が?」
「ああ。と言っても、いつもの独り言みたいに『誠凛と当たるのは決勝、か』ってな」
「ふぅん?」

誠凛、なぁ……
監督が気にしてるって言う事は、何か有るのか?気にはなったが、タイムリミットだ。電車のアナウンスが降車駅を告げる

「また明日な」
「おう」

木村に別れを告げて、俺は電車を降りて改札をくぐる。家につく頃にはもうすっかり疲れきっていて、誠凛の名前も次の日目が覚めたら忘れかかっていた

それからの日々の中で薄れるばかりだった誠凛の名前を俺が思い出したのは、テストも終わって予選リーグで秀徳が二勝を挙げた次の日。同じクラスの大坪の口からこんな話を聞いたからだ

「無名の新設校が大番狂わせの快進撃を繰り広げているそうだ」
「へえ。名前は?」
「誠凛高校。一年生だけで構成されたチームなんだが……予選の二回戦、去年の決勝リーグでうちと対峙した××高校に圧勝したそうだ」
「!」

中谷監督の予感は当たってたってことか。更に大坪は続ける。なんでも誠凛には中学時代、キセキの世代には及ばなかったものの天才と呼ばれていた五人、無冠の五将のうちの一人が居て、そいつは元々秀徳が獲得しようとしていた選手だったとか。誠凛には大人の監督がいなくて、女子高生が監督をしているらしいとか。中学時代全く無名だったがレベルの高いシューティングガードとポイントガードが居るらしいとか。他のメンバーも粒ぞろいでとにかく、今年できたばかりのチームとは思えないほどに強い、らしい

「気になるのか?」
「このままいくと決勝リーグで対峙することになりそうだからな」

大坪はストイックな男だ。己の技量を磨くための努力だとか、その為の身体づくりだとか、とにかく勝利の為に自分に貢献できることをなんでもするようなタイプで、そのせいか対戦相手が誰であっても自分を信じてプレーをするような節がある。相手に合わせて駆け引きをするタイプの選手じゃない、と言えば少し語弊があるかもしれないが、とにかくこんな風に他のチームに興味を持つなんて珍しい

「誠凛の次の試合、いつだ?」

考える前に言葉を吐いていた。木村や大坪、中谷監督が気にする新設高校、どんなチームかこの目で確かめるのも悪くはねえ

「次は……今日、だな」

ついてない、といった風に大坪が零す。今日は秀徳も試合がある。二年で唯一スタメンに抜擢された大坪はもちろん、木村を誘って誠凛の試合を見に行く事も出来ないか

「わかった、ありがとうな……悪い、今日はお前の応援に行けねえ」

この時俺の頭の中に、誠凛の試合を見に行くのを止める、という選択肢は何故か無かった

「監督や先輩たちには上手く言ってくれ」

大坪と木村に言い残し放課後、俺はいつもよりもずっと早い時間に駅につき、家とは反対方面の電車に揺られ、誠凛の試合が行われる体育館を目指す
目的地に到着するのと目当ての高校の試合が始まるのはほぼ同時だった。二面コートの誠凛が試合をする側、東側の四列目が空いていたのでそこに座る。コートの上では選手たちが開始の時を待っていた

ふわり、とボールが中空に放りあげられ、試合が始まる

誠凛ボールから始まった試合は、完全に誠凛の流れで進んだ。まず最初いきなりスリーを連続で二本決めたのがでかい。落とした三本目もセンターがきっちりリバウンドを決めたし、残りのメンバーの動きも良い。パス回しが絶妙だ。そして、誠凛の攻撃の要になるパスを回しているのは

(あのポイントガード…!)

サラサラの黒髪と鋭い目つき、白い肌にバスケ選手としては華奢な体格。間違いない。一年前、秀徳にオープンスクールで見学に来ていた一つ年下の

(イヅキ……!!)

あれから少し背が高くなったのか。去年はいいとこ160台後半ぐらいだった。細い身体と綺麗な顔立ちも相まって、遠目で女生徒かと見違えたのを思い出す。去年の夏のことだ。半分に仕切られた体育館のネット越しに必死にプレーする姿が痛々しくて目で追ってしまっていた

第二、第三クオーター間のインターバル中、俺の頭はあの夏へと飛んだ

とっくに帰ったと思っていたイヅキが体育館の入り口に居たから何かと思ったら、靴が無いとかで軽く錯乱していた。あの時の目は困り果てた小動物か何かのそれで、あとから思えば柄にもなく加護欲を掻きたてられたとしか言いようがない。気付けば簡単な自己紹介をし、無くなった靴を探す手助けをしていた。結果的に探す間もなくイヅキの靴を間違って履いて行ってしまった女生徒の名前が判明し、俺がしたことと言えば校内放送で呼び出して貰えるように先生に頼みに行ったぐらいだが

あの時、イヅキに感じた違和感

極端な話、バスケってのは団体競技の割に個人主義な節がある
超極端な話、一人で切り込んで一人でシュート打てる選手が五人揃えば、パスなんて回し合わなくても勝てる様なスポーツだ。もっとも、現実はそうもいかないからパス回しに特化したポイントガードなんてポジションが成り立つわけだが

あの日見たイヅキのパス回しはまるで、特定の誰かにシュートを決めさせるために磨かれたものみたいで

ポイントガードってポジションは、判断力が問われる。どの状況で誰にどんなパスを回せば試合展開が変わるか、敵味方含めたコート全体に常に気を配らなければならない。名の通り試合の分岐点をになうポジションは、器用な人間でないと務まらない
ポイントガードの性質によって、チームの性質が変わる、というのは過言じゃあない

けれどそう、イヅキは

(あいつすげえ不器用だったよな……)

器用度と言うのは何も手先の話に限ったことじゃあない。別名「コート上のコーチ」と呼ばれるチームの司令塔は、人間的にも器用でないと務まらない

インターバルを挟んで第三クオーターが始まると同時に俺は頭を切り替えるが、目線はもう、イヅキ以外の選手を追う事をしなくなっていた
つい数か月前まで中学生だったその顔はあの日から成長したとはいえまだどこか幼く、それでいてコート全体を常に見渡す視線は酷く怜悧で、あの夏靴が無くなってパニックを起こしていた顔とは別人みてえだ

いや。思えばイヅキはあの時も、バッシュを履いてコートに立つと冷たい顔をしていたか

なんて危なっかしいパスを回すんだ、と思ったもんだ

アップのパス練習一つをとっても、イヅキはあの中で一番下手糞だと言うのがわかった
ミニゲーム中は他の中学生にボールを回してもらえず、ただひたすら走るだけ

必死な姿が痛々しいと感じたのは、どこか自分と重なる部分があったからだろうか

ブザービーターが鳴り響く。試合は誠凛の圧勝に終わった
目的の試合が終わったところで、俺は静かに席を立つ
ちらりと振り返ったイヅキはもう、冷たい目をしていなかった

あの夏
イヅキを個人練習につき合わせたのは、ただの気まぐれだった
危なっかしいパスを回す、一つ年下のポイントガード
ネット越しに感じて、対峙して確信したこと。イヅキは特定の誰かの為にだけバスケをしている。酷く部格好で不器用で、誰にでも有効なパスを回せる技量がない。イヅキ自身が活躍しようという欲がまるでない。自分のパスを受けた特定の誰かが、綺麗なシュートで大量得点を挙げることをずっとイメージしながらバスケをしている。そのスタイルは、秀徳には向かない

秀徳は――というより、強豪校すべてにこれは当てはまるかもしれない
友達ごっこで頂点に立てるほど、バスケってのは甘くない

「宮地」
「っ。わり、どうした?木村」

どうやら上の空だったらしい俺を木村が難しい顔で窺っていた。幾ら自主練習中とはいえ部活中に集中できてねえなんて、最悪だ。頬を叩いて気合を入れ直す

「どうしたもこうしたも……お前、最近部活にあまり真面目じゃない気がするぞ」

今も集中できてないようだったし、居残り練習の時間も減っている。それに最近欠席が増えただろう。と木村が言うのに

「はあ?寝ぼけてんじゃねえか。刺すぞ」

どきりとしながら返す

木村の言う「最近」がいつ頃のことを指すのかはわからないが、俺がバスケにかける情熱は、もう、入部してからずっと下がりっぱなしだ
俺はバスケが好きだ。ボールの手触り、バッシュの履き心地、対戦相手との駆け引き、味方との連携。バスケを通して五感が拾う全てが好きだ
けれど、と思うのだ
それは本当に、バスケだけでしか得られないものだろうか、と

「サッカー部に行った○○、レギュラー入りだってよ」
「聞いた聞いた!インターハイ予選でデビューしたって」
「あいつ足早かったからなー」
「元々はテニスの経験者らしいし、結構何でも運動得意なんだろうな」

バスケは、好きだ
バスケ以外のスポーツをする自分の姿は想像できないし、バスケを捨てる理由なんてものもない

「それより木村、公式戦デビューおめでとう!」
「ああ……と言っても、出たのは第三クオーターだけだけどな」
「何言ってんだよ!二年で試合でてんの、お前と大坪だけだぞ!」

騒がしくなる更衣室に長く居たくなくて俺は無言で着替えを済ませ、お疲れ様ですと挨拶をして部活を後にする
木村が公式戦に出た事を、俺は知らなかった
ずっと肩を並べて走っていたはずの親友は、気がつくと遥か彼方に小さく居た

木村との差に気付き始めたのは、丁度去年の夏だった
同じ頃に偶然出会ったイヅキは、俺の現状をそのまま体現しているように見えた

同種の人間の匂いを嗅ぎ分けることができるのは、本能って奴か?
あの日イヅキにきつい事を言ってしまったのは、忠告半分、八つ当たり半分だ

『向いてないから、諦めろ』

イヅキと俺は、バスケに対して賭けているものがまるで違う 俺がイヅキのように誰かと一緒の勝利を夢見てバスケをしているわけじゃあない。そんなものは秀徳で生き残っていくには不必要だったし、酷く幼い考え方だ
だから俺はずっと自分が活躍することを夢見てボールを追いかけてきたけれど、そうすると今度は周囲全てが競争相手だ。どうしても周囲との実力を比べてしまう。集中できない。気付いた時には俺は周囲からずいぶん遅れて走っていた
俺がバスケを続けるのは楽しいからじゃない。俺にはこれしかなくて、バスケを手放して空っぽになる自分が怖い。ただそれだけだ。好きと言う気持ちを盾に、惨めにしがみついているだけ

だから少し、イヅキを嫉んだ

眼下で走る黒髪を追うのをやめられない。もう何度目か分からない誠凛の試合を、今日も俺は見ていた。予測通り予選決勝戦へコマを進めた誠凛は、今日も順調に試合を展開していた

(今日は一段と絶好調だな)

第四クオーター残り一分時点での点差は十点。だが、突然予想外の事態が起こる
誠凛のセンターが、倒れた

(なっ……!!)

試合は辛うじて誠凛が勝った。けれど

(決勝リーグ……大丈夫なのか?)

後味の悪い試合だった。一目散に体育館を後にする誠凛の選手たちを呆然と見送った後も、しばらく俺は動けなかった

イヅキのあんな慌てた顔を見たのは、初めてかもしれない
……初めても何も、俺にとってのイヅキは、コートの上で見る以外の顔はあの夏の日しかないんだけどな

それでもあの日のイヅキが俺の知るイヅキの全てで、知らない顔を見た瞬間少し胸のあたりが騒いだのに無視を決めていたが

「なんだよ。全然弱いじゃん、誠凛」
「正邦と泉真館にもトリプルスコアで負けだってよ」
「やっぱまぐれだったんじゃん?ここまで来たの」

久し振りに見る誠凛の試合。インターハイ決勝リーグ第三試合。秀徳は、一切手加減をしなかった
オフェンス、ディフェンス、両方の要になっていた誠凛のエースを欠いた誠凛は、見る影もなく弱体化し、やがて試合終了のブザーが鳴る。圧倒的な実力差を前に、誠凛は、イヅキは、俯いて、遠目からでも肩を震わせて泣くのを我慢しているのがわかった。その細い身体は酷く頼りなく見えた。誠凛のインターハイ出場はこれで無くなった

胸が、痛い

イヅキの姿を通して俺は、何を見ていたんだろう
俺とイヅキの接点は限りなくゼロだ。一瞬偶然交わった夏の日、けれど俺は、イヅキを否定した
不器用で、下手糞で、それでもバスケを通して「好き」以外の別の遣り甲斐を見出して、そこに正直に走り続けて、そうしてイヅキはここに居る。けれどこの先には行けない
秀徳には、確かに向いていない。秀徳に求められるのはまず誰よりも真剣にバスケに向き合う事だ

「……何泣いてんだよ……邪魔だ。轢くぞ」
「!ひ、あ、」

なんでこいつはいつも俺の通り道を塞ぐんだ
掴みあげたイヅキの手首は細く、このまま力を入れればねじ切れるんじゃねえかって考えてしまった

「泣いてなんかいません……」

しゃがんで俯いていた顔は、俺が無理やり立ち上がらせたせいで隠せやしない。それでも抗おうと目線を俺から逸らし続けている

「泣くんじゃねえよ」
「っ泣いてなんかいません!!」

叫ぶと同時にイヅキは俺の手を振り払う。嘘吐いてんじゃねえよ。目元赤いし潤んでるし、声だって震えてんじぇねえか……なあ、イヅキ

俺はお前が羨ましかったんだ
擦り切れた自尊心とバスケでしか得られない快感をひたすら糧に走り続けることにもうすっかり疲れ切ってしまって、けれど、バスケを欠いた自分が上手く想像できなくて。それはもう、宮地清志じゃないような気がして、なのにもう走り出す気力なんてなくて、止まって座りこんで息を止めようとした俺に、不器用でもあの頃から変わらないまま走り続けていたお前が、どれだけ眩しかったかわからないだろ?

あの夏の日お前を通して俺は、俺自身を見ていたんだ。周囲との実力差に置いていかれそうになるのを、安っぽいプライドを動力源に必死に齧りついてしがみつく俺
俺とお前は確かにバスケに賭けているものが違う。けれど、そう言う意味では俺達はとても良く似てんだ。放っておけねえよ

なあ、イヅキ。お前は此処で終わらねえんだろ?

「お前な。悔しがって泣いてる暇あんなら死ぬ気で上達しろ。殺すぞ」

この際お前が何のためにバスケしてるかなんてのはどうでもいい。そんなものに対する俺の興味は、俺を覆い尽くしていた不安や焦りを道連れにもうとっくに薄れた

今俺を覆うものは、イヅキの進む先に立ちはだかるのが俺以外の人間でないことを願う我儘な感情だけだ

言いたいことだけ言って背を向け歩きだす。肩越しに振り返った瞳は強く、強く胸が騒いで

ヒリヒリした痛みをエネルギーに、俺はまた駆け出して行けそうだと思った


久し振りに、ストバスにでも寄って帰ろう





















































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