…は?

「何だと」

よく聞こえなかった。いや、聞こえたには聞こえたが、恐らく聞き間違いだ

そうあって欲しいと思ったんだが

俺の言葉に、顔をますます赤くして、だからっ!と左目を見開いて
もう一度、意を決したようにキッっと正面から俺を見てチェイニーは同じ言葉を繰り返す

「俺だって、抱きたい」



それが約三日前
行為の終わった明け方の事だ

関係を持つようになって五年。紆余曲折を経て同じ屋根の下で暮らすようになって一年と三カ月

同居したてのころはほぼ毎日のように体を重ねていたのを思い出す
あれから熱が冷めたという訳ではないが、さすがに毎日はお互い飽きる
今では頻度は二周に一度だが、恐らく行為は濃厚な方だ

この時も、夜通し縺れ絡み合っていたのもあって、恐らく眠気から来るボケだろう。と結論付けて
寝言は寝て言え、とその嘆願は却下。まだ何か言いたそうな口を無理やり口で塞ぎ、そのまま火がついてもう一ラウンド
馬鹿か。たったのこれだけでまともに喋る事も出来ないぐらいに呂律の回らなくなる舌で
異常に感じやすいこの体で、抱きたいだ?
無理に決まってるだろう

体格差から言えば、俺が下になるのが世間的には正解なんだろう
だが残念だったな。これまでもこの先も、俺が抱かれるなんてことは万に一つも有り得ない

……はずだった



「コーヒー入れたんだけど」

時刻はそれから二日と半日後
自他共に認めるコーヒー好きの俺が一日二杯は欲しいブラックコーヒーの、一杯目はいつも朝食に飲む
そして二杯目は、午後三時の茶菓子と一緒に、チェイニーが持ってくる

いい香りがする。煎れたてのキリマンジャロの香りだ

茶菓子とコーヒーカップを二つもったチェイニーが、ローテーブルにそれらを並べて勧めてくる

「分かってるだろうが」
「ブラックだろ?大丈夫。俺の方にしかミルクは入れていない」

控え目にふと笑って、黒い方をす、と差し出される
この笑顔が、好きだと思う

カップを手に取り、香りを嗅ぐ。その時にそう、若干違和感を覚えたが

「熱いから気をつけて」

少し淹れ方を変えてみたんだ。と言ったチェイニーの言葉を信じた

あれから特にチェイニーは、抱きたいだのなんだのは言わない
当たり前か。行為の時ですら、直接的な単語を出されるのを極度に嫌うのに、普段の会話の中でそう言った事を世間話のように話題に出せるようには思わない

もし次の行為の時に強請られても、しらばっくれて強引に抱けば、熱に溺れて忘れるだろう
俺が逆の立場なら、そう、例えば無理やりにでも押し倒して…


「……?」

おかしい

視界が、歪んでいる……?

歪んだ視界で、チェイニーと目が合う。すると奴は、きゅっと唇を綺麗な三日月形に
そう、まさに蛇が笑うとこう言う顔をするのだろうとしか例えられないような妖艶で危険な笑みを顔全体に浮かべて

そっと、耳打ちされる

「眠い?久し振りに作ったから上手くいくかどうか不安だったんだけど、利いてるみたいだな」

コーヒーの入れ方を変えた、というのは嘘だったわけだ
香りに違和感を覚えたのは、異物が算入されていたからに他ならない

つまりはそう言う事だ
カップが左手から落ちる。床に黒い染みが広がる

「な…んの…ま…ね……だ……」
「眠そうなエメット、すごくエロい。すき」

そっと、顎を指で掴まれる。その手付きが、恥じらう様な夜の顔とは別人のように厭らしい

寒気すら覚え、意識が完全に落ちるその前に、頬にキスされ、そっと囁かれる

「今日は俺が抱くから」

柱時計が、三時を告げた――

以上が回想。そして現在

酷い頭の痛みを覚える
体が横になっている感覚。どうやらいつの間にかベッドに運び込まれたらしい
仰向けに寝かされている。体に触れるシーツの感触。恐らく全裸だ
目を開けないで分かることはここまでだ。目隠しは…されていない
両足は自由に動く。だが両腕は動かない。肘が曲げられた状態で、恐らく何かで固定されている
これ以上は見て状況を確認しなければ。ふぅ、と一息ついて、腹を決め、目を見開く
最初に視界に入ってきたのは天井
首を回して部屋を見渡す。思った通り、場所は寝室。ベッドの上。そして予想通り、布一枚身につけていない
時刻は恐らく夜中

問題の手首は…残念ながら俺の視界に入らない。頭の上、恐らくはヘッドボードの柱にでも固定されているのかもしれない
少し強く手首を引く。この感触…縛っているのは恐らく固い材質の紐の様なもの。ロープかもしれない
この体勢で固定されていては、体を入れ替えて逆に押し倒すことは不可能だ
ご丁寧に両方別々に縛ってある。片方が何かのショックで解けても平気なようになっているらしい

やれやれ。用意周到な事だ
不満だ。ああ不満だ。隠すことなる鼻を鳴らしてやる。と

「気分は…どうだ?」
いつの間にそこに居たのか、直ぐ右の脇から声が聞こえた

人狩をする妖魔はきっとこんな顔をするんだろう
獲物を射止め、決して逃がさぬ目
首を巡らせ、その目と真っ直ぐ視線を合わせる

「何の真似だ」
「エメット、不機嫌だとそればっかり…言うよな?」

昼間と同じくふっと口角をあげて笑う顔
だがは爛々と輝き、そう、言うなれば恍惚な光を称えている。厭らしい
俺の右に寝そべり、俺の方に体を向けながら、そっと右手が伸ばされる

「俺さ」

はぁー。と長く熱い息を吐き出しながら、腹筋を右手でなぞられる。臍のあたりから徐々に、胸に向かって。その手が吐息と同じように熱い
手を緩やかに動かし、人差し指で右の乳首をそっと触りながらチェイニーは言葉を続ける

「なんで俺がいつも女なんだろうって、思ってた。エメットの方が肌白いしきめ細かいし
体だって華奢だし、指とか鼻筋とかすっとしてて、目がちょっと冷たい感じがして、睫毛が長くて、綺麗で」

カリ…と、乳首に爪が立てられる

「ぐっ…!」

開発された覚えもないし、自分で弄る事もないそこを幾ら刺激されても性的に何とも思わないが、思いきり爪を立てられ痛みに顔をしかめる
するとチェイニーは、満足したのか今度はゆるゆると親指の腹を使ってそこを押す。俺がいつもチェイニーにしているやり方を、そっくり真似をすればいいと思っているようだ
……手付きはたどたどしいが、元が不器用で無いのと長い指が手伝って、そこそこ再現出来ていると勘違いしているようだ。満足気にまた熱い息を吐き出す

「だから、なんで俺がいつも抱かれるんだろうって」

言葉と共に、骨盤の丁度上に馬乗りになる形でチェイニーが圧し掛かる
こっちが全裸だというのにきっちり黒い長袖のTシャツと、白い綿パンツを着こんでいるのも、恐らく毎回自分が先に全部脱がされることへの抵抗だろう
暗い部屋の中、天井の光を絞った明りを背負い、チェイニーが見下ろしている
攻められているのは俺の方なのに、何故かチェイニーの顔が赤く、息も荒い
作ったような貼りついた笑いが、気持ち悪いほどに妖艶だと思っていたら、
唇が左胸に吸いついて来た

「!」
「感じてる?気持ち、いい?」

揉むような仕草で上下の唇で乳輪を食みながら、左手で右胸の筋肉をなぞられる
一通り撫でまわしてから、一旦離れて後ろ出に体の中心を握られる感触

「はぁっ…固い…ははっ…」

きゅっと握り込めながら、きもちよかったんだ。と喘ぐように、唇を胸から離さないで囁くチェイニー

……いや、寧ろこれは

「固いし…ちょっと大きい?あは…感じてるんだな…かわいい…はぁっ…あっ…」
「おい」

荒い息を吐きながら、相変わらずさわさわと俺のものの感触を確かめ、握ったり、しごくように手を動かすチェイニーに鋭い声をあげると、それを無視して体を下の方にずらして行き、俺の両足の間に顔を埋めてくる

反応し始めて敏感になった幹に鼻先で触れられ、一瞬体にびくりと電流が走る

その様子にチェイニーは又熱い溜息を吐いて、かわいい、と零し、今度は唇で啄ばむように先端に触れてくる

「エメットかわいい…びくって…あ…ん…なぁ。舐めてもいい…?」

ここで恐らく「だめだ」と言っても舐めるのだろう。いつもの俺がそうだ
こいつは俺に攻められるセックスしか知らないから、自分がいつもされていることが一番気持ちいい事だと完全に思いこんでいる
いやだいやだと言っているのを無理やりねじ伏せる、それが俺のやり方だ

だが言っておく。こういう手が通じるのは、相手が極端に意地っ張りの被虐体質で感じやすい相手だけだ。つまり俺はこう言う事を言われてもなんとも思わない、むしろ腹が立ってくる
両足がぐっと広げられ、使い物にならない今この体制でも、片手どちらかでも使えたのなら殴り飛ばしているところだ

「……」
「黙ってるってことは…良いよ、な…っは…ぁん…っ
…合意……てこと…?ふっ…あ…じゃぁ………舐める、ぞ」

予想通り。聞く耳を持たない
「舐める」と宣言した後も一、二拍、躊躇うように間があって
意を決したように、ゆっくりと口が開いて、そこに飲みこまれる

いつもこうだ。俺が強要する時も、特に覚えたての時は、嫌だいやだと言って、酷い時には泣いて、それらを全部制して無理やり咥えさせたもんだ
何度かさせているうちに口に入れること自体に抵抗は無くなったものの、少しの躊躇がいつもある

「…ふっ」

直接教えた事だけに、口淫だけは、さっきまでの見よう見まねの愛撫よりも格段に上手い
括れや先端なんかの感じるところを外しながら、しゃぶり付くように唇と舌を使って刺激を送られ
物が少しまた、大きくなるのを感じて、声が漏れる。と

「ぁ…ん…」

先端がチェイニーの上あごに付いて擦れる。敏感なそこを刺激されて、チェイニーの目に生理的な涙が浮かんでいる
よく見れば発情した雌猫のような姿勢になって先端にかぶりついているチェイニーのその腰が、物欲しそうに揺れている

それを知覚した瞬間、先端から何かが溢れる感触に思い至る

物を舐めていたチェイニーの方が恐らく、舌に来る刺激で分かったのだろう
快感に塗れた瞳が上目使いでこちらを見やる

大量に出たわけではない。イっただのイってないだのそういう次元ではないのだが
チェイニーはそれが嬉しかったようで、さらに刺激を与えてくる

「ん…く…っは……」
「あ、っ…イって?…きもちい、…あぁ…」

出る。と思った瞬間、きゅぅ…とチェイニーが顎を使って吸い上げる
そのままその口内に、白濁した物をぶちまけると
教えた通り、こくんと音を鳴らして一滴残さず全て嚥下した

「はぁー…っ…」
その間に俺は大きく息を吸って、乱れた息を整える。いつの間にか汗もかいている。熱い
チェイニーの方は唇を手の甲で拭って、再び俺の上に馬乗りになる
今度はさっきよりも上。ずしり、と体重が腹筋にかかる

「は…なぁ…きもちよかった…?」

聞きながら、唇を唇に押し当ててくる。誰だ、いつも口淫した後にキスするなと言っているのは
ちゅっちゅと音を立てて、子供がするような接吻に
このままでは埒が明かないな、とこちらから口を開けて舌で刺激してやると
面白いぐらいにびくりと体が跳ね、「あぁん…」と喘ぎながら口が開く
そのまま顎を使って食らいついてやり、逃げ惑う舌を絡め取ると独特の苦みが広がる
角度を変えながら息を継ぎ、長く長く拘束する

考えてみれば妙な話だ、こちらは手が使えないのだから、いつものように頭を抱え込んで逃げられないように固定できない
大してあちらは両腕が自由で、且つ俺の上に馬乗りになっているのだから、本当に嫌なら無理やりにでも口を引きはがして上体を起こせば簡単に逃げられる

なのにどうだこの体勢は。もっとしてくれ、と言わんばかりに両手で俺の頬を挟み、きつく目を閉じ浅い息を繰り返し、鼻に鼻を摺り寄せてくる

「気持ち良いか?」

歯列を舌でなぞりながら、キスの合間に尋ねると

「きも、ち、い…ひぁ、ん!」

と、殺しきれない快楽の声に眉を潜めて返事をする

腹にチェイニーのものが密着している。服越しからでも分かるその膨らみ、質量
間違いない、達しないのが不思議なぐらい、張り詰めている

「エメットは…?」
「あ?」

腰を振りながら、チェイニーが訪ねてくる

「エメットは…気持ち良い?その…俺に抱かれ、…ぁん…
は…一回…イったもんね…きもちい」
「ああそうだな。お前の自慰を見てるようで、興奮する」

たどたどしい問いかけを最後まで聞かずに本音を言い放てば
何を言っているか分からない、というようにぴたりと口付けが止まり、顔が上がる

「えっあ…?」

チェイニーの顔がどんどん不安に染まる
トロン、としている右目が、思考が不明慮なことを物語っている
その目に向かって、言い放つ

「お前の下手糞な前戯もフェラも如何にも自己満足な感じで正直興奮しないが、
自分の行為に溺れて勝手に発情してる様は、かなりクる」

言いながら、いつの間にか浮いていたチェイニーの腰にに、右足を宛がい中心を指で握ると

「!あああぁんっ」

不意打ちを食らって甲高い声が漏れる

そのまま指の腹で中心を円を描く様にくりゅくりゅとこね回せば、いとも簡単に膝から崩れ落ちる

「お前、俺を抱くと言っているのに何故服も脱がない?」

羞恥に膝を閉じようとするも、俺の体を太ももで挟み、中心に足を入れられた状態では閉じることもかなわない
そのままの体勢できつく目を閉じ、頭をゆるゆると振って快感から逃れようとしているチェイニーを許すわけもなく、更に刺激を送る

「やぁっ…あ…エメットが…」
「俺が、どうした?」

ぐぅっと足全体で握り込むように中心を捕らえる
このままイかしてやろうか、と過虐心に火が付きそうになる

チェイニーはというと、やはりかぶりを振って手を頭に添えて、快楽に耐えながら言葉を吐き出す

「エメットがイって…ぁはあっ…気絶、したら、んぅ…脱ぐ…ぁ…!」

…は?
俺が気絶したら?冗談も大概にしろ

「馬鹿が。イって意識を手放すなんてお前ぐらいだ」
「!っひゃぁ!それっやめ…あ!!」

不満を隠すことなく親指の先端でチェイニーのものを弾いてやると
面白いぐらいに体がびくんと跳ねて、声が上ずった

あまりにも馬鹿だ。呆れて物も言えない
俺がイって気絶したら服を脱ぐ?いつになるんだそれは
一生かかっても無理だろう

「どうして俺が気絶しなきゃならない?」

つー、と爪先で触れるか触れないかの加減で綿パンツの下から上をなぞってやると
そんな些細な事にも耐えられないのか、ついに涙を流しながらチェイニーは言う

「ひぃ…ぁ…だって…!見せられないっ」

見せられない?今更か?

「お前の勃起したものなんて何度も見ている。昼間にしたこともあるだろう?」

もう一度、同じようにつー、と爪先で下から上へ刺激を送ると。また甲高い嬌声を上げる
刺激に反応する体にいや、嫌と頭を振るチェイニーに、再度問う

「何が気に入らない?」
「ちが…ぁあん…!普通じゃないっから!あぁん…!」

それからしばらくパンツの上から刺激を繰り返し送り、脱げ、脱がない、と問答をしていたが、流石にここまで頑なに拒否されると、俺としては最終手段に移るほかない

「もう良い。俺が脱がせる」

言葉と共に両足を使い、パンツの中心に足を掛ける

「!だめっ…!」
と、チェイニーが両手でそれを抑えに来る。だがその手を払いのけ、中心をもう一度刺激してやると悲鳴と共に動きが止まる
その隙を狙って、下着ごとずり下ろしてやると

「…!」
「…やだ、ぁ…」

そこには、幅の広いリボンでぐるぐるに巻かれたチェイニーのものがあった

俺がした覚えはない。というか、こう言うプレイをした覚えは一度もない
リボンの方には見覚えが有る。一週間ほど前に俺宛てに着た小包を縛っていた、赤いリボンだ

だが何故それがチェイニーのものに巻かれているのか
状況を理解できず言葉を失ったまま、羞恥にゆらゆらと揺れるそれを見ていると

「みないで…んあ…」

チェイニーが片手で顔を覆い、もう片方で下半身を隠そうと手を巡らせていた

「どう言う事だ?」

チェイニーの顔をうかがいながら聞く。最悪の憶測は、誰か別の人間にやられた、という事だが、それは有り得ないと信じたい

「…ちゃうから」
「は?」

羞恥の余り、大きな声が出せないのは今に始まった事ではないが
今回のこればかりは聞き逃せない。何だって?

「聞こえなかった。もう一度」

するとチェイニーは、恨めしそうにこちらを一瞥してから、顔を真っ赤にして、視線を泳がせながら告白した

「俺が…その…口ですると…いつも先に…ぁ、ん…出しちゃうっから… 俺が攻めるのに…んぁ…かっこ、わる…い…」

呆れた。たったそれだけの理由で縛るか?
だが同時に合点した。今日は幾ら刺激をしてもイかないと思っていたが、そう言う事か

「その割には、勃起してるな」

ちゃんと縛っているのか?と呆れつつも繁々と観察して、素直な感想を言う
すると意外な答えが返ってくる

「さきに…縛ったら…辛いかなって思った、し、っぅん…勃たないかなっ、て思ったから…」

つまりは、何だ?
俺を愛撫しているうちに興奮して催すのは格好がつかないが、
最初から縛って居てはそもそも勃起しないのではないかと危惧し
マスターベーションをして勃起させたものを縛った?
それを俺に見られたくないから、俺が気絶したところでリボンを解いて挿入するつもりだった?

……こいつは

「阿呆か」

冷たく言い放つとびくりと体を震わせて、俺を見る

「大体な、最初から完全にいきり立った物をお前に入れた事が有るか?入れた瞬間出ちまうだろうが
それとな、お前気付いてるか?その完全に勃起したそれ、自分でリボン解けるのか?解いた瞬間堪らなくなって自分で扱いて出すぞ」
「そんな…ぁあ…」

光景を想像したのだろう、チェイニーが又頭をゆるゆると振ると、リボンを巻いたそれも物欲しそうにゆらゆらと揺れる

その様子が、余りにも厭らしいくて、妙案が浮かぶ

…そうか、こうすれば
ああ。そうだな、このプレイは初めてだし、主導権はこちらにある

「チェイニー」

名前を呼べば、はっとした顔で表情を伺ってくる
快楽に掠れた声でちいさく「なに?」と問うその顔に、もっと近くへ、と命令をして
至近距離で、耳元で囁く

「取引だ。俺の手を縛ってるこれ…右でも左でも良い。片方解け。そうしたら楽にしてやる」

楽にしてやる、の部分は特にゆっくりと囁く

すると、困惑の色が混じった目をこちらに向けられる。口外に、本当に楽にしてもらえるのか、と訴えているのだ

今度は目を見て、声を更に低くして言う

「片方を繋いだままにしていれば、俺が置き上がって体を入れ替えて立場が逆転するという事もないだろう?お前の望みは達成されると思うんだが」

そもそもどうして縛られているのかと言えばそう言う事だ。ハンデの無い状態で俺が大人しく組み敷かれているわけがないだろう、というこいつの勝手な予想で、俺は両腕の自由を奪われているわけだ

この体制で片腕が自由になろうとも、まぁ、殴り飛ばしたり頬を打ったりすることは出来るが、上体を起こしたり寝がえりをうったりするのはまず不可能だ
手首をがっちりと固定されているわけだからな

しばらく考え込む表情をして見せていたチェイニーも、その点を理解したらしい
だが、慎重な性格らしいと言えばらしいか

「…わかった…えっと…片方…利き手じゃない方でも良い?解くから…」

そう言って僅かに姿勢を変えて、利き手でない右手首の拘束をするすると解き始める
本当のことを言うと俺は左手が若干器用なだけの両利きだから、右でも左でもほとんど変わらないんだが
それでも慎重派としては、利き腕は封じておきたいところなんだろう
するすると器用に手首を縛っていたロープの様な丈夫な紐を解き終ると

「解けた…!あぁっ!」

そのタイミングを見計らって、自由になった右手でチェイニーの雄を鷲掴みにする

「は、っん…やぁ…」

拘束を解く際に、膝立ちになって上体を上の方にずらしていたため、リボンで縛ったチェイニーのそこは、握ってくれとでも言わんばかりに俺の右手の届く範囲に居たのだった
これを握らずしてどうする?
俺は何か悪い事をしているか?

「っぁ…エメット…話が違うっ」
「違うもんか。俺は『楽にしてやる』と言った」

浅ましく腰を振りながら、犬の様に喘ぐチェイニーを益々追い詰めるように、袋を揉みしだくと
根元を縛った事によって出口を無くした快感が、声となって溢れだす

その色欲に塗れた声に紛れながら、チェイニーは不満を言う

「俺はっ…ぁん…抱きたいって…!」

この期に及んでまだそれを言うか

だが、これを叶えてやらないほど俺は冷たくは無いつもりだ
それについては考えて有る、と言うと、チェイニーはぽかんとした顔をこちらに向ける

「安心しろ…おい、ローションはどこだ?」

まさか用意してないとは言わないだろうな、と聞くと

「いつもの…なら…持ってる…」

と、膝に纏わりついていた綿パンツのポケットから、俺がいつもチェイニーに塗っているものが出てくる

「…お前…これ俺の…」
「俺が一人、で!買いに行けるかっ」

今日この行為の最中だけで何回こいつに呆れたやら
それでよく抱きたいと言ったもんだな

いや、それは今はいい
大事なのはここから先の行為だ

「で。お前それの塗り方は知っているのか?」

予想通り、チェイニーの動きが固まる
当たり前だ。初めての行為で、普段いつも入れられている方が把握している方がおかしい

「しらなっ…!!」
「痔になったらどうする。責任とれるのか?」

ここ。と指を後ろに回り込ませ、入口をトントンと刺激しながら聞いてやる
たったそれだけでもう、口を両手で押さえなければ悲鳴を上げてしまうぐらいに感じ切っている

その潤んだ目と下がった眉毛と、唇の動きで言葉を紡ぐ。「おしえて?」

「そうだな…まずは、お前が自分で自分のここに塗り込め」

行き成り本番を試そうというのが無謀だ、と言って、指をそこから退ける

…ああそうだ、肝心な事を忘れていた

「の前に、脱げ。汚れるぞ。下も完全に脱げ。あとこれも外せ」
「…わかった…」

何で俺だけ全裸でこいつは下半身を脱いだだけなんだ。おかしいだろう、フェアじゃねぇな
とは言わないでおいた。俺が抱く方なんだから、と言われたら堂々巡りだ

衣擦れの感触すら快感に変わるのか、チェイニーは相変わらず浅い息を繰り返しながら緩急な仕草で服を全部脱ぎ、眼帯も外す

これで準備は整った。後はそう、この計画に気付かれないように実行するだけだ

「続きだ。自分で自分の後ろに、ローションを塗れ。上手く濡れたら俺に見せろ。判定してやる」

両の目が不安げにこちらを見やり、それからコクン。と頷くと
ローションを手に取り、口淫をする時のように、やや躊躇いがあって、たどたどしい手つきで後ろを触る

「っ!…んぁ…ひっ………ぃぅん」

塗る時に自分で見ながら塗った方が確実に分かり易いと思うのだが
狭いベッドの上で座るスペースが無いと思ったからなのか
それとも勃起したのを更にリボンでぐるぐると巻いた厭らしい自身を視界に入れるのが嫌なのか
俺の顔を見下ろしながら、やはり膝立ちの状態で、後ろ手にそこを探り、ローションを塗りこめて行く
本来体温で有る程度温めてから塗るはずの冷たいローションは、その反応しきった体には毒でしか無いと思うのだが、それは敢えて教えてやらない

「っぁ…塗れた…」

ややあって、俺が使うよりもやや多めのローションを塗り終えたチェイニーが、かくにんして?と聞いてくるので、体を反転させるように命令する
膝立ちの状態で頭と尻の向きを入れ替え、チェイニーは俺にローションを塗った入口を見せる
するとそこは、さっき一度触れただけなのに物欲しそうに収縮を繰り返している

で、肝心の塗り方だが、予想通りというか期待を裏切らないというか、表面にべったりと塗っただけでまるで意味をなしていない
てらてらと厭らしく光る、多すぎたローションが、太腿を伝って落ちている
これはこれでかなりそそるものが有るが、塗り方としては最悪だ

「チェイニー。指を中に入れたか?」

太腿を伝うローションをすっと中指ですくい、再び入口に塗りつけながら問いかけると

「っ中…?ぁ入れてな…っ」
「…あのな、表面にいくら塗りたくっても意味無いだろうが」

こうやって塗るんだよ、と中指を一気に沈めて、鍵を回すように手首を回転させると
行き成り中に入れられることを予測していなかったのか、嬌声と共にチェイニーの胸と頭が崩れ落ち、尻を突きあげた格好になる

「ぁあ…ぁそんな…んっいきな、り!」

様子を見て更に指を一本増やし、ばらばらに動かして中を刺激する。敢えて前立腺には触れず、近いところを何度も行き来しながら、表面でてかてかしているだけだったローションを中に塗りこめて行くその間も、チェイニーは顔を俺の下腹に擦りつけ、快感に震えている

「んぁ…エメット…まだ、?」
「もう少しだ…お前、あんな塗り方して、本気で俺を痔にする気だったのか」

冷たかったローションは今や互いの体温で充分に温まっており
量が多かったのも手伝って、とろりと穴から溢れ出る
それを見ただけで、一度出した後大して反応していなかった俺の物が固くなるのを感じる

何度見てもこの様子は卑猥だ

大きくなった俺の物を目の前にして条件反射のように、ただ震えているだけだったチェイニーはそこを舐めはじめると、体の上下から質の違う水の音が響く

「欲しいか?」
「ほし…ぃぅ、んぁ」

廻らない舌で、欲しい、欲しいと駄々をこねるチェイニーの太ももをしたから上へ舐め上げると
足全体ががくがくと震える
完全に勃ち上がったまま達する事もかなわないそこは、もうずっとゆらゆらと誘うように揺れていて
これで体が自由なら、組み敷いて一気に高ぶりを鎮めているところだが、生憎左手は使えず体をベッドのシーツから浮かせることはかなわない
チェイニーもそれを分かっていて、いや、自分がこの状態になってもまだ俺を組み敷いて抱くことを考えてか、とにかくこのままではお互いに身動きが出来ない
それでも俺は、これで完全に立場が上になったことによる余裕があった

焦れたチェイニーが軽く歯を立てながら、稚拙な滑舌で誘う

「エメット…!」
「焦るな。順序が有る」

のを、俺は言葉で制し、体をこちらに向けるように命令をする

泪と涎と、俺の体液でべとべとになった、発情した雌の目と視線が合うと
わざと動かない左手に力を入れながら、優越感から生まれる笑みを隠すことなく言葉を紡ぐ

「見ての通りだ。この体制ではお前を抱けないが、解く必要はない」

言葉の意味がわからないようだ。曖昧に首をかしげてこちらを見やるその顔に、ゆっくりと自由な右手を這わせると
平熱が低い分、火照った肌には気持ち良いのだろう、僅かに目が細められた
更にゆっくり、慈しむように右手を上下に滑らせながら、俺は言葉を続ける

「お前が上に乗ればいい」

細められた時と同じ速度で、ごくゆっくりと瞼が上がる。どうやら意図を理解していないようだ

「理解できないか?」
「ん…わかんない…」

甘えるように、おしえて?と言いながら、右手に擦り寄せられた頬をぴしゃりと叩くと、驚いて目を見開いた

「痛…ァ…」

だがその痛みも、快楽の地獄へ突き落とされた体には快感でしか無いらしい
痛いと言いながらも、腰が揺れている
文句を言いたげな表情を無視して、直接的な単語でこれからすべき行動を命令する

「もっと下に跨って、お前のそのゆるい尻の穴で俺を咥え込め。騎乗位だ。名前ぐらい知ってるだろう」

すると、理性のほとんど吹き飛んだ巡りの悪い頭もやっと理解したらしく、かっと顔が赤くなる
自分で腰を鎮めなければいけないその状態をありありと想像したのだろう、羞恥にぽろぽろと泣きながら訴える

「やっ…!む、り…」
「無理ならこのままだ。俺は左手が動かせない」

別に俺としてはこのままずっとこの状態を鑑賞し続けるだけでも抜けそうな気はするし
実際右手は自由なんだからそうしても別にかまわない。正直にそう思うぐらい、今日のチェイニーは格別だ
本当にこの状態が辛いのは、ローションを塗られて散々解されて、ひくつく秘孔にこのまま何も与えられないチェイニーの方だというのは本人が一番理解しているはずだが
自ら動いて俺の物を後ろで咥え込むのは羞恥心からできないと言ったところだろう
昼間の良く冴えた頭なら、ここで俺の左手の拘束を解いて大人しく身を委ねるという選択肢を取るのかもしれないが
熱に浮かされ、蕩けた頭ではそこまで考えが到らないのだという事も、俺は分かっている

「どうする」

もう一度、右手を伸ばして今度は指の項で頬に触れてやる

「このままずっとそうして震えているか?俺の物を咥え込めば楽になれるぞ」

潜めた声にひくりと頭の上の肩が震えた
俺の右手を解く時に取引した条件を、覚えているのだろうか

「楽になりたくないのか?」

留めの一言を掠れた声で囁いてやる。この声にチェイニーは本当に弱い事を、俺は知っている
すると頭がすっと俺の方に堕ちて来て、額同士がくっつく感触と共に、弱弱しい返事が、聞こえた

「らくに…なりた、ぃ」
「上出来だ」

くしゃりとその茶髪を掻き混ぜてやると、気持ち良さそうに目の前の顔が歪む
キスを強請るように唇に舌が触れたが、それはまた後でな、と胸を推すと、不満そうな顔をした

「俺をちゃんと咥え込めたら、してやる」

口角を僅かに上げながら、約束を紡ぐと、チェイニーの顔が幸せそうに貌を作る
それでもまだ不安そうな顔をしながら、体を起こし、俺の骨盤に馬乗りになる形で体重を掛け手チェイニーが座ると、
恐る恐る、といったふうに、後ろ手に俺の物の形を確かめるように、握ったり撫でたりを始める

触ってるだけじゃ埒があかないだろうに、と思い始めた頃、再び顔が合うと、そのまま見つめあって、やがて決心したように腰が浮き
ゆっくり、ゆっくりと、俺の物を咥え込み始める
緊張のあまり締まった尻の肉を右手で解し、穴をそっと撫でてやると、また嬌声が上がる

「っ…ふ…ぅ、ん」

咥え込まれる俺の物と一緒に、指を一本忍ばせて、狭い穴をくちゅりくちゅりと掻き混ぜてやると
最初は異物感に顰めていた眉も、半分ほどを飲み込むぐらいには気持ち良さそうに下がっていた

自重と重力が手伝って、いつもより深く飲みこんで行くのが分かったのか

「っつ…ん…ぁ…ふか…い…」

と喘ぎながら、やがて全てを咥え込むと、浅い息を何度も吐き出して、妖艶に笑って俺を見た

「エメット…きもちいい?」

そのまま腰を曲げて顔を近づけようとしたが、その時に中の物が動いて掻きまわされるので、キスすることが叶わずまた泣きそうな顔になるのを、挿入したままだった指で中を刺激してやると
きゅっと天を向いたまま触れられることもなく、未だリボンも解かれていないチェイニーの物がまた揺れる

「ぁ…ね、これ…ほどいて」

思い出したようにチェイニーがそっと、遠慮がちに言うのを
俺は、だめだと言ってやった

「やっどうして…?」
「自分で縛ったんだ。自業自得だろう?このまま出せない状態でイけ」

俺にそれを解く資格は無い。と言って、また中を指でぐるりと掻き回すと、チェイニーは いやいやと首を振った。刺激が足りないのだ

「あ、ね…!それやだぁ…」
「だったら自分で動け。俺がしてやれるのはこのぐらいだ」

冷たく言い放つと、チェイニーはそんなぁ…と泣きじゃくる
いつもはしないで、と泣くのに今日はして欲しいと駄々を捏ねるその我儘さに溜息をつき、あのな、と俺は苦言を言う

「お前が俺を抱きたいと言ったんだろう?なら抱いている方が積極的に動かなくてどうする。これじゃぁいつもと同じだ」
「やぁ…ん。だ、て…これ…」

結局入れられてるのは俺じゃないか。ともっともらしい事を言うチェイニーだったが、こいつは今まで一つ、最も肝心な事を言わなかった

「当たり前だ。お前は俺を抱きたいとは言ったが、入れたいとは言っていない
それにさっき俺が欲しいかと問えば、欲しいと言ったのはお前だ
俺は充分譲歩したつもりだが?この体勢、いつも下に組み敷いているお前を見上げていると、抱かれているのは俺のように錯覚するんだが、お前の方はそう思わないのか?」

更にお前がもっと積極的に動けば、もっとそう感じると俺は思う。と提案してやる

そう、ずっとチェイニーは「抱きたい」とは言っていたが、タチ役になりたいとは一度も言っていない
「抱く」という単語を口にするのにも顔を赤く染めていたのに、更に直接的な単語を出すのを憚ったのだろうが
言葉にしていないことは俺の中では言っていないのと同じことだ
だから俺は直接的な単語をよく使うし、それで攻め立てるのも何とも思わない

それについて言及すると、チェイニーは、そんな、と顔を青くしたが、やはり咥え込むだけ咥え込んで何の刺激も与えられないのには焦れたようで、やがてゆっくりと、腰を動かし始めた

「はぁ…ん!ローション…も、」
「ああ。最初からお前に咥え込ませるつもりで塗らせた
だが予想以上に下手糞で呆れた。次からも自分で塗らせて慣れさせないとな」

思えばずっとこいつは受け身だった。ネコ役だからとかそういう次元ではなく、何もかもを俺が施していた
こいつはセックスの度に、与えられる強すぎる刺激に嫌だいやだと首を振り、快感に身を任せ、溺れているだけだった

そんな男が俺を抱きたいだなんて、甘すぎる

「腰ばっかり振ってないで体触れ。あと、上下にももっと動かせ。お前の前立腺はそんな深いところには無いぞ」
「ぁは、ん…わかっ、た…」

コクコクと頷き熱い息を吐きながら、前後左右だけでなく上下の運動も加えて、腰を大きく振り始めると
同時にさわさわと、両手で俺の横腹から胸の突起を撫で始めた

相変わらず手付きは稚拙で幼稚な愛撫だったが、艶めかしいその表情と、厭らしく揺れる下半身も手伝って俺の方も徐々に息が上がって行く

「…ふ、ぁ…っ」

声が漏れると、チェイニーは気をよくしたのか、一度大きく腰を持ち上げて、一気に沈めてくる
同時に臍の上を右の掌が滑り、左の人差し指と親指が胸の突起を摘む

すると俺の腰はびくりと動き、また少し浮いていたチェイニーの、浅い所にある一番いい部分を刺激して、甲高い声が響く

「ぁあっ、あ!や、ぁそこっ…!」

一度いいところを掠められると、今度はその一点を探るように腰の動きが変化し、むしゃぶりつく様に入口の襞が俺の物に食い付く

「はぁ、あ、んぁ、っ」
「ん…ふ…チェ、イニ」

息が上がりながら、名前を呼べば、こちらに顔を向ける
目があって、目を閉じれば、意図を理解したチェイニーの唇が触れる
そのままどちらからともなく噛みつくように接吻を交わせば、舌が絡み合い、どちらとも付かない唾液が口の端から滴り落ちる

「ぁっあ…!エメ、ト、」
「はっ…ん。俺も…!出す、ぞ」

激しい口づけの合間にお互い絶頂が近い事を告げあい
宣言通り俺は、再び深く沈んだチェイニーの中に白濁した物を勢い良く吐き出す

「やぁ…!あ…!もっ…あああああ!」

熱いものが中を濡らす感触にチェイニーも、散々我慢したそこから一滴も溢さないままに果てた



一度気をやったチェイニーの目が覚めると、俺はまず左手の拘束を解く様に指示し、その条件にチェイニーのリボンを解くことと、このままの体勢で抱くことを約束した

リボンを解いてすぐ、俺の予測した通りチェイニーは、今まで散々我慢させられていたそこに自ら指を這わせ、粘度の高い大量の精液を吹き上げると、その後も止まることなく延々と白い物をそこから垂らしながら抱かれ続けた

いや、今回抱かれていたのは俺の方か

いつも見上げている俺の顔が自分より下にあることに、チェイニーはいつも異常に興奮したらしく、入れられているのは自分の方なのに攻めている気になって、相変わらず下手糞な愛撫を俺の体に施し続けた

俺はというとそのチェイニーの姿を見て、やはり自己満足な自慰をずっと見せつけられている気分になっていたが、その格好が余りにも卑猥でいつもより多く中に出し
更に気が付けば、普段は滅多に喘がないのにも関わらず、いつの間にか高い嬌声を上げていた

そんな俺を見てチェイニーは、かわいい、かわいいと全身にキスをしてきたので
俺はチェイニーの、服では絶対に隠れない位置に大量にキスマークを付けてやった


行為は濃厚な方だと自覚しているが、今回のこれはそれを鑑みてもかなり濃い物だったように思う
やり疲れから二人とも気を失って、次に目が覚めた時は部屋が西日に照らされていた

やってしまった。と痛む頭を押さえて上体を起こし隣を見れば、未だに目の冷めないチェイニーが幸せそうに、寝息を立てていた

しばらくはこれで体を繋げなくても平気だろう。と、昨日付けたキスマークにもう一度唇を這わせ
どうせまたしばらくしたら寝なければいけないのだ、と再びベットに潜り込み、二度寝を決めた

もう二度と、抱きたいなどと言われない事を願いながら






























fin