口が寂しい

市販のたばこに手をだしたのは、高々そんな理由


だから

「たばこなんて吸ってないで!はい」

と渡された棒付きキャンディーでも、大して変わりなかった

このままこっちに乗り換えようかな、なんて思ってたのに・・・


くちゅり

「んぁ」

ついさっきまで舐めていたキャンディー。ちなみにバニラ味は、ついさっきこいつの口の中へ消えた

甘いものが好きなことは知っていたけど、なんでわざわざ人の舐めているものを奪いにくるんだ

その甘い粘液を唾液に絡めた舌が、今、どこを舐めているかなんて
悪いが俺の口からは説明できない

「いっ…」

口を塞いでも耳を塞いでも漏れる声
足がすくむ。真っすぐ立って居られなくなって、背中を壁に預ける
それを待っていたかのように、エメットは少し笑った

吐息が、下腹部を刺激する

「っ…ん…!」
「我慢をするな。苦しいだろ」

くちゅり

後ろを、掻き回される感触

指じゃない。そこに入っているのは、この為だけに包みを解かれた棒付きキャンディー。確か味は…

「!あ、ぁ」

一番いいところを、時折思い出したようにわざと軽く擦られる
その度前はぴくんと正直に反応を返して
頭が、真っ白になる

「イけよ」
「ぃや…いっ…!!あぁっ」

言葉と、あまい吐息と、熱い舌と、後ろを掻き回されて擦られる感触

どれか一つでも少しでも強くされただけで堪えられないのに

カリ…と歯を立てられて
エメットの口の中へ、精を吐き出してしまう

この瞬間はいつもひどい嫌悪感で
自慰だって、これが嫌で今まで全然したことなかったのに
…だからこんなにあっさり、射精してしまうんだろうか

「相変わらず感度がいいな」

ごくっ
精液を飲みながらゆっくりと立ち上がってエメットは言う

今日こそは、文句の一つでも言おうかと、思ったんだが
乱れた息を整えるのに必死で、結局口を開けても荒い息しか出てこない

強引に襟首を掴まれて琥珀色の目が近づいて、半開きの口キスをされるのはいつも通り

自分の味を知るのが嫌で、口でされたあとのキスは、嫌いだ
さっきまで口に甘いものを入れていたせいか、酷く苦い味がする
いつもはたばこを吸っているから、青臭いとしか思わないのに

「はぁ…っ」
「まだ甘いな」

好きな味だ、と言って、いつもより長くて激しいキス

息が続かない、息継ぎの仕方はよく知らない

足が、体を支えられなくなる

「ぁ…ん」

足が崩れて力が入らなくなって、ずり、とへたりこんでしまう
その直前に、エメットは俺の体に入れていたものをゆっくりと引き抜いて、その薄い唇にくわえた

ペたりと座り込んだ俺に、足を開くように命令する

冷たい琥珀色に逆らえるわけなんてなくて、俺はいつも、されるがままだ

羞恥心がないわけじゃない、ただ、嫌だと言うと、もっと酷いことを強要される

溜息一つ。覚悟を決めてゆっくり足を開く
くぱあ、と口を開けた俺のそこに、冷たい目が注がれる
酷く恥ずかしくて、目を塞ぐ。さっき達したばかりなのに、もう、頭をもたげているのが分かる。細かにそこが震える

「チェイニー」

ふいに名前を呼ばれて、目を開ける
気づいたらエメットが、足の間に顔を寄せていた
それに気づいて足を閉じようとした瞬間、熱い舌が、さっきまでキャンディーを咥えていた場所に入る

「ひゃ…ぁん…」

我ながら間抜けな声だ
舌に翻弄されて、もう何も考えられない

いつもよりぺちゃぺちゃと淫らな音が聞こえる
多分、さっきそこにくわえさせられていたときにキャンディーが溶けたからだ
そしてそのキャンディーはというと、まだエメットが咥えている
入口で溶けていたものと、今口の中にある物と、先走りの液と、唾液を絡めて
奥へ奥へ、エメットの舌が入ってくる

「…!ん…ぁん!」

感度がいい、と称された体は
だめだ、と思っているのに、本能に正直で
前はまた、腹にくっつきそうなくらい成長して、ぴん、と天を向いて、汁を零す

意地悪い舌は行ったり来たりで、一番いいところは舐めてくれない

「ェメット…エメット…!」
「なんだ」

俄かに視線を上げて、左手で髪を耳にかけて、面倒臭そうにエメットが返事をする

だいたい俺がこうやって名前を呼ぶときは刺激が足りない時で、こいつもそれをわかっている、と思うんだが

「用があるならちゃんと言え」

ないなら呼ぶな、と言ってまた視線を反らされる

「あ…っぅん…!」

相変わらず足りない刺激に、頭を振って物足りない、と講義をすると

「随分と我が儘だな」

仕置きが必要か、と言って、傍らに手を伸ばし、エメットはまた新しい飴の包みを解いた
しかも…今度は二本

「入らない、とは言わせないからな」

そういって、まず一本目のオレンジのキャンディーを棒の真ん中ぐらいまでを外に出すような具合まで注意深く入れて、くちゅりと掻き回される

「いっ…」

舌とは違う、異物感

エメットはそれを左手で掻き回したり出し入れしたりしながら、右手で新しいキャンディーの包みを解いて自分の口へ持って行き、咥えて唾液を絡ませる
赤い舌が、酷く卑猥だ

「二本目。メロンソーダ味」

ご丁寧に味の説明まで添えながら、くぷ、と薄緑と白のマーブルのキャンディーを俺に咥えさせて、先に入れておいたものと交互に出し入れしたり、弧を描くように掻き混ぜたりする

「ぁあ…ん」

それだけで又、呆気なく意識を手放しそうになる俺を見て、エメットは喉を鳴らした
「まだだ。後一本あるからな」

そう言って、一番最初に入れていた最後の一本をチロリ、と口から覗かせて、口移しで俺の唾液を絡ませる

一番最初に後ろに入っていたキャンディー
白とピンクの…ああそうだ、これ、いちごミルク味…

もうずいぶん小さくなったそれを二人分の唾液でべたべたにして、エメットは俺の下半身に食べさせる

「ひあ…!」

体の中で、ごつん、とキャンディー同士がぶつかる
ぶつかった弾みで、一瞬、いいところに擦れて

ぴゅく、と、白い体液が出る

「ほら、入った」

見込み通りだと満足そうに口を歪めてエメットは、左手で器用に三本のキャンディーを動かし、右手でゆるゆると前を扱く

「も…むりだっ…て」

俺はというと、ぎゅっと、エメットの服を握り締めることでしか快楽をやり過ごせない。情けないことに、視界が歪んでいる。きもちいい

「お前は本当に…感度がいいな」

言葉と共に先端を親指で擦られて、また、ぴゅく、と溢れ出すのを指に絡めてそこに塗り付けられる

一度も触られてもいないのに、服に胸が擦れていたい

「どうして欲しい?」

今更思い出したかのように、エメットはしらばっくれる
ふいに少しだけ刺激が強くなって、俺は声を押し殺すことなく喘いでしまう

「ちゃんと言え」

吐息だけで言われて、耳たぶに軽く歯を立てられる。ピアスがかちゃり、かちゃりと音を立てる

「ぁ…」

快楽の波にさらわれそうになるのを必死につなぎ止める
その間も手と舌は止まらずに
緩い刺激がもどかしくて、キャンディーを咥えているそこが勝手に中のものを締め付けて、 無意識に腰が動く

「あ…ん…あん…っ」
「独り遊びが相変わらず上手いな」

何でもオモチャにする。なんて、呆れた調子で言われても、もう俺は何も考えられない

「なっ・・・イかせて・・・」

頼むから・・・と、唇を軽くすり合わせながら言うと
一人でイけ、と体を離されそうになって、
必死になって、顔が熱くなりながら

「エメットの手がいい・・・」

と言った
毎度毎度言わされる台詞。それでも毎回酷く恥ずかしくて、言ってからしばらく、目が合わせられない

けど

「ひぁ…!!」

それに見合う刺激を約束されてる

何の前触れもなく、両手の動きが激しくなって、わけが分からなくなる

前から後ろから、淫らな水音が鳴る

手の動きが段々激しくなって、

「あ、ひぁ…ぁ…ん…ぁあん…!!」

俺はまたあっさりと、意識を手放してしまった


いちごミルク味のキャンディーは、それで溶けて無くなってしまった

けれど、それから残り二本のキャンディーが溶けきるまで、俺はいいように遊ばれた




それ以来

「あーっ!!又吸ってたでしょっ。この間あげたキャンディーどうしたの?」
「あ・・・あぁ・・・その。全部食べて…」
「もう!仕方ないわねっはい!」

と、差し出されるそれを見るたび

「エメットも、はいっ」
「いちごミルク味か・・・悪くないな」

誰かが、それを食べているのを見るたび


「―!!」


体が疼くようになってしまった


・・・・・・重症だと、つくづく、思う






























fin